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OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。



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少し沙ルイも混じってる続き。

「エ――――!!?嘘でしょ!!!?」


いつもと変わらない、退屈で仕方なかったはずのHR。

しかしこの日、ルイスの甲高い絶叫がもそもそとしゃべる新担任の声を掻き消した。


「る、ルイス、HR中だから」

「だって、転校なんてありえないでしょ?!刹那学校着てまだ数ヶ月しかたってないのにぃ!!」



隣の席の沙慈は騒ぎ立てるルイスを必死で押さえつける。

新担任はルイスの様子に慌てふためき、小太りな身体を揺らして一身上の都合で、とおどおどと繰り返すのみであった。





「どう考えたっておかしいわよ!新学期でもないのにイアン先生もいなくなっちゃうのよ?留学生って言ったって、学期の代わりに転校するならわかるけど学期途中で成績も出ないうちにっていうのはおかしいって!!」

「何か事情があったんだよ、先生にもよくわからないらしいけど・・・」


なんどか闘牛の如く鼻息を荒くして先生に詰め寄るルイスを宥め、いつものように屋上でお昼を食べているとルイスが納得できないのかチキンライスを口にしながら再び声を荒げていた。

だか確かに今回の刹那の転校は腑に落ちない。

僕達ぐらいにはなにか一言いってくれればよかったのにと、ウインナーをかじりながら思ってみる。

刹那は謎が多い子で、基本無口で冷たかったが友だちだと思っていた。

いつもならルイスの隣で恋の話を聞かされ眉を潜めている彼女の姿が、今日はない。そしてこれからも。

少し寂しくて、でも何か事情があったに違いないと思い込むように咀嚼していると、「そうだ!」とルイスがスプーンを宙に向けて叫んだ。


「エーカー先生ならなにか知ってるかも!!」

「え、どうして?」

「だってあの二人両思いだし、つきあってたかもしれないのよ?もしかしたらエーカー先生絡みかも知れない!!!」


沙慈があっけに取られながらも卵焼きに箸を突き刺していると、「教師と生徒の禁断愛・・・もしかしたらばれちゃったとか?!」「ひょっとしたら刹那は妊娠していて、責任を取るために結婚したのかも??!」と少女特有のとっぴな推理をし始めていたのだ。

よくもまあ、そんなに思いつけるものだと圧倒されながらも綺麗に巻かれた自家製卵焼きを頬張っていると、ぶつぶつと呟いていたルイスが「あーもう!!」と突然弁当箱を地面に下ろし、すくりと立ち上がった。


「こう考えていても埒があかないわ、直接グラハム先生に聞かないと!!」

「え、ええ・・・?」

「お昼休みが終わっちゃうから、早く行きましょ沙慈!!」


そういうなりルイスは弁当が残っているにもかかわらず食事中の沙慈の腕を引く。

その力の強さから彼女が本気である事を悟り、沙慈はため息をついてしまう。
彼女は言い出したら止まらない。

これを止めるにはだ。


「ルイス、聞くのもいいけどほっぺにご飯粒ついてるよ」

「え、ええ??!うっそ、何処??!!」


そういうなりルイスは血の気が失せ、わたわたと鏡を探し出す。

実際彼女の頬にはオレンジの米粒がついていたのと、チキンライスのケチャップのせいで口の周りが少しだけ汚れていた。口の周りについては、彼女の名誉の為に黙っておいたけど。


「いやだ、鏡どこいっちゃったんだろ!!沙慈、ちょっとトイレまでついてきて!!」

「ええ?!僕食事中なのに・・・」

「だったら沙慈がちゅーしてとってよお!!!」

「えええええええ???!!」


ぎゃあぎゃあと騒ぎ出し沙慈に詰め寄るルイスに、今度は彼が赤くなってしまい、彼女を止めようと屋上で食べる生徒達に生温かく見守られながら必死で弁当を死守しながらも迫る彼女の肩をつかんでいた。










「いいのかい?君はこれで」


沙慈とルイスがいつものようにドタバタ劇を繰り広げている間。

お昼で賑わう生徒達の喧騒からは少し離れた保健室で、昼ご飯代わりのドーナツを頬張りながらカタギリは窓際に立っている男に声をかけた。


「いいのだよ、これで」

「我慢弱い君にしては頑張ったけど、本当に彼女を止めなくてもよかったのかい?」




あんなにベタ惚れだったのに、と友として心配しながら声をかければ、「本当だよ」と振り返らずに彼は答えた。


「確かに彼女がいない日々は辛い。もう愛しさが募って刹那欠乏症で死にそうだ!」

「まだ別れてから数日でしょ」



本当にこんな調子で待てるのだろうか、とエンゼルクリームにかじりながら半眼で見つめていると、「それでもだ」と静かにグラハムは続けた。



「彼女は私に約束してくれた、必ず帰ってくると。
刹那は約束を反故するような人間ではないからな!!」


麗らかな日差しが差し込む窓際。青空と日の光を背景に、グラハムは振り返って満面の笑みをカタギリに見せた。

彼のスーツからその表紙にネックレスが飛び出し、赤い軌跡を描く。

カタギリに刹那を手放すと告白したグラハムの目は腫れぼったく、この男が泣きついたのかと驚いたもので、同時に心配していた。

そんなに惚れ込んでいたのに、送り出してしまって大丈夫なのだろうかと。
しかしグラハムが見せた笑みに、カタギリはその心配が杞憂であったことに苦笑して見せた。

今の彼の笑顔は、フラッグを駆りガンダムを追い求めていたときと同じ、晴れやかな笑みだったから。


グラハムもまた刹那と会って変わった。

負傷して打ちのめされ、空虚に空を見続け日々を生きる彼を心配し、何かをさせないと想い教授の紹介で共にこの学校に赴任してからは体裁だけ取り繕った仮面のような笑みを浮かべ、追っ手の影や変わらぬ日々に退屈し翠玉の瞳が曇りがかかっていた時期もあった。

だが、刹那とあってから変わった。

一目ぼれをした、と嬉しそうに報告してきたあの日から、彼の輝きは幼子のように輝きをとりもどしたのだ。

人は恋をすると変わるというが、それは本当のことらしい。

かつては我慢弱いと言って怪我を無視し、ガンダムを追い求め飛び出していった軍時代の彼とは違い、今のグラハムは寂しさこそ見せるが安定した様子でカタギリに力強い微笑を見せてくれるのだった。


「妬けちゃうね、全く」

「君も早く想いを告げられるといいな!!」

「・・・グラハム・・・」


笑顔の彼から言われた人物を思い出し、カタギリはエンゼルクリームを取り落としがっくりとうなだれた。

そう、刹那がいなくなると聞いて数日。

カタギリの想い人もまた、何故か連絡ができなくなったのだ。






「それは言わない約束だろ、グラハム・・・」

「ははは、いつまで告白しない君が悪いのさ!」



じとーとしたカタギリの視線を背中に感じながらも無視し、グラハムは窓のサッシに手を置いて空を見上げた。


突き抜けるような青空。かつてグラハムがそこにいた。今は彼女がそこにいる。
胸の中に僅かにもやっとした感情が広がる。

グラハムが焦がれた空に彼女がいるためか。

それとも空に彼女を奪われたからか。

だが。

グラハムはそっと胸元に手をやり、ネックレスを引き出す。
血のような赤。彼女の瞳を彷彿させるその色に、グラハムはそっと笑みを浮かべた。

そしてそれを空に掲げ透かせてみせた。

こうしたら、この石のように彼女もまた空を眺めているのだろうと思えるから。

彼女はきっとグラハムが眺める空にいるはずだと、思えるから。





「君は今、どこにいるのかい?」




問いかけても当然答えはない。

しかしグラハムに答えるように、そよ風がチェーンをゆっくりと揺らし、太陽に照らされ無機質なはずの宝石が、微笑んだ刹那の瞳によく似た柔らかな輝きを、キラキラと零してくれた。








同時刻。


展望室で、刹那は窓に手を置いて空を見つめていた。

外には大気に覆われ青い光が透過している地球とは違い、底なしの暗闇と、ダイアモンドのように冷たく燃える星が転々と見えるのみだった。



「刹那、そろそろ時間だよ」


ドアが開く音と共に、真新しいオレンジのパイロットスーツに身を包んだアレルヤが優しく刹那に声をかけてきた。

対する刹那もまたブルーを基調としたパイロットスーツで身を包み、片手にはヘルメットを手にしていた。
かつての学生服は既に地上に置き去り、そこには女学生刹那ではなくCBのガンダムマイスター刹那・F・セイエイがいた。


「すまない、今行く」


少しだけ緊張が滲み、固くなった声にアレルヤは笑みを零すと、ふわりと半重力の中を浮かんで刹那の横に立った。


「よかったのかい?グラハム先生から離れて」

「・・・お前は俺を恋愛脳だと思っているのか」

「そ、そういうわけじゃないけど・・・えっと・・・」


無表情で睨みつけてみればアレルヤは慌てて否定し、言葉を捜しているのかもじもじと指先をつけたり放したりしていた。

図体と似合わない、女々しい態度だったがアレルヤらしく、緊張で強張らせていた筋肉を微笑することで和らげる。彼がいいたいことはわかっている。
心配してくれているのだろう。


「大丈夫だ、アレルヤ」

「本当にかい?」

「約束があるから」


そう言って、胸をそっと押さえた。

パイロットスーツを着ているために取り出せないが、この手の下には彼と同じ瞳の色のペンダントがある。

そして共に戦うのだ。


約束を、果たすために。





「約束って、何かあった・・・」

「刹那!!アレルヤ!!遅いぞ!!」


アレルヤの言葉が遮られ、凛とした怒鳴り声が割ってはいる。

振り向けば、怒ったためか夕闇色の髪を怒りで逆立てたティエリアと、ロックオンが立っていた。




「アレルヤー・・・おまえさん、お邪魔虫がいなくなった瞬間にここぞとばかりにアピールしやがって・・・抜け駆けすんなよな」

「ろ、ロックオン誤解です!!僕は別に・・・!!」

「うるさいぞロックオン・ストラトス、アレルヤ・ハプティズム!!!作戦前に緊張感の欠片もないとは・・・万死に値する!!!」



作戦前で緊張感に満ちているはずのブリッジの一角が、にわかに賑やかになる。


アレルヤに掴みかかろうとするロックオンと必死に否定するアレルヤ、そしてそんな彼らに言葉を荒げるティエリア。

これから紛争根絶を共に歩んでいく者達。

そして、学園潜入の時に刹那を支えてくれた、家族。

親を自らの手で殺し、そういった馴れ合いに冷め切っていたはずの刹那に温もりと叱責を与えてくれた。

失いたくない。

きっと、グラハムが刹那と約束したときも、同じ気持ちだったに違いない。
この人たちを、失いたくない。




「生きる」


つかみ合いの喧嘩になりかけた時、刹那がぽつりと言葉を漏らした。


「俺達はガンダムに乗り、紛争根絶をなす。そして、生きるんだ」

ぐっと拳を胸の上に作る。彼が想いを託してくれた約束の証の凹凸を僅かに感じ、心強かった。


「誰一人、欠けないで」


刹那の低く、意志の込められた声に、三人は笑うこともなくじっと聞き入ってくれた。

これから自分達がいくのは闘争の渦。


たった4機で、世界の歪みと対抗するのだ。刹那自身が生き残る確立はおろか、皆が生き残るなんて夢物語のような可能性なのだ。

それでも。例え自分達がいずれ咎を受けるようなことをしていても。

同じ家で、騒ぎながら過ごしたあの日々をまた、と願ってしまう。

グラハムと出会ってから、随分と欲が深くなったと自分で思った。

それでも、ロックオンを、アレルヤを、ティエリアを・・・そしてトレミーのクルーを誰一人失いたくない。



静寂につつまれた部屋の沈黙を破ったのは、ロックオンのため息であった。




「お前さん、変わったな」

くしゃり、と大きな掌が頭に置かれ、掻き混ぜるように撫でた。




「一人じゃないことに、気付いたんだな」

あいつのおかげ、だったら腹立つけどと苦笑しながらも、ぐしゃぐしゃに撫でるロックオン。髪はきっと悲惨なことになっているだろうけど、その手が心地よく成すがままでいた。

マイスターになっても、地上で共に暮らしていた時と同じように接してくれて安心した。そういえばCBに始めてきた時も、こうしてくれたが馬鹿にされたと思って振り払ったものだ。



「我々はCB・・・紛争根絶の為のマイスターだ。生き残るなんて幻想だが・・・君の言うとおり、途中で死ぬのは許されない。紛争根絶を成すまでは生き残らねば」



ティエリアは出撃前なのかレンズ越しではなく、直に鮮やかな赤い瞳を鋭く向けてきたが、その瞳にはかつての任務に忠実ゆえの冷徹さは消え、明確な意志がこもった強い視線を向けてきた。



「それが君の約束かい?刹那」




アレルヤの問いに、胸を押さえながらこくりとうなずけば、片方しか見えない瞳を細め、彼の口は優しく笑みをかたどった。




「そうだね、生き残ろう。そして帰ろう、地上に」




僕も、もう少しあそこで勉強したいんだ。

アレルヤの言葉に、刹那は力強く頷いた。


罰はいつか受ける。

けど、俺には、俺達には帰る場所かあるから。

だからそれまでは平穏を。



「そんじゃ、行くか!まずはちょっくら第二世代取り返しにいこうぜ!!」



ロックオンの声と共に、皆ふわりと僅かに浮かび自らのガンダムが用意されている格納庫に向かって走り出した。

最後に一回だけ展望室を振り返り、暗い宇宙を見る。



これからかつてあんたがいた空に向かう。

あんたは、見ていてくれるだろうか?

俺が帰ってくるそのときまで。




「行って来る、グラハム」



暗い宇宙に、青い星が小さく見えた。

当然グラハムの姿なんて見えるわけではないけど、あそこに彼がいると考えると胸が温かくなる。


帰ってくるから。

あそこから、見ていてくれ。

俺の、ガンダムの姿を。

刹那は胸から手を放すと、ロックオン達の後に続き移動用のレバーをつかんだ。












CBによる全世界の武力への宣戦布告が告げられたのは、それから数日たった頃だった。

現れた4機のガンダムが降臨し、圧倒的な戦力で世界の武力に刃を向ける。

誰もが畏怖と疑問で突然現れた彼らの行動を見守るだけの中、一人の青年は空を見上げ、青空の中を切り裂くような輝きの軌跡と共に飛び去っていく天使を、その翠の瞳で見守っていた。












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