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OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。



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第二段。アレ→刹風味。

「アレルヤっ!」


マルチーズ写真集(秘蔵版)を微笑ましい気持ちで見ていると、けたたましい音
と共に(それこそ扉をうっかり破壊する勢いで)刹那が突然入ってきた。

その音に動揺し、思わず写真集を取り落としてしまう。


「せ、せせ刹那っ!?どうしたの?」


慌てて写真集をベッドの下に隠すアレルヤを尻目に、刹那はつかつかと部屋に入
り込んできた。

何時になく真剣な少女の顔立ちに、部屋の主は自分であるのにアレルヤは思わず
たたずまいを直してしてしまう。




「ど、どうしたんだい刹那?」

「頼みがある」


紅く輝く意思の強そうな瞳がアレルヤを捕えた。それが微量の不安なのか、少し
だけうるんでいて見慣れた姿であるはずなのにアレルヤはどきりとしてしまう。

刹那からの、頼み?
珍しい、一体なんなんだ・・・




「・・・せつ」


「俺にっ菓子作りを教えて欲しいっ!」




「・・・は?」




叫ぶような言葉に理解が追い付かず、アレルヤは我ながら間抜けな声を出してし
まった。きっと顔も酷いものなのだろう。

何か頭でも打ったのだろうか。(頭の中でハレルヤがお前も案外酷いなと囁いた
が気にしない)

だが真剣を絵に描いたような刹那の顔に、失礼だったと考えを改める。

しかし刹那が、あの料理等家事には全く興味がなかった刹那が、教えを請うなん
て・・・
やっぱり天変地異としか思えない。

しばらく驚きで口を動かすことすらできなかったアレルヤだが、目の前の刹那が
小首を傾げてきたのに気付き、慌てて刹那の手を掴む。


「う、うん僕でよかったら・・・」

「助かる」


若干安堵した顔で、刹那がアレルヤの手を握り返してきた。

温かい、筋張ってはいるがまだまだ小さな手。しかしその手が微かに柔らかくな
っていて、勝手に鼓動が早くなるのを悟られぬようアレルヤは微笑んだ。















「刹那がヴァレンタインなんて・・・一体どういう風の吹き回しかと思ったよ」

「・・・悪かったな。だがこれも立派なミッションだ。」


チョコはなかったけど、と刹那は僅かに視線を落とす。

まずは材料、と意気込んで買い物にいったものの、前日ということもあり見事に
チョコ売り場は空だった。作るからには徹底的に、と気合いを入れていた刹那はい
きなり出鼻をくじかれたように感じ、己の準備の遅さを呪った。


「大丈夫だよ。ココアは充分あるから。」

「・・・でもやはりチョコではないと駄目では」

「お菓子なら大丈夫でしょ?刹那の気持ちも伝わるよ」

「・・・伝えるつもりはないが」



大体ただ礼を言うだけだ、と薄力粉を秤ながらぶっきらぼうに刹那は言ったが、
その割には計量カップから粉が溢れていた。



「刹那って素直なんだかよくわからないね」

「うるさい」


そういえば、こうして刹那とキッチンにいるのは初めてかもしれない。

戦闘技術や鍛練は教えを請うというのに、家事はいくらロックオンが教えようと
しても無視し、彼が嘆いていたのを覚えている。

きっと以前の刹那なら、買って適当に礼をしていただろう。いや、そもそも刹那
は相手に借りを作るような隙は見せなかったはずだ。同じ屋根の下で暮らすアレ
ルヤ達だって、刹那の隙だらけの姿はなかなか見られない。


そんな子が。

どんな影響を受けたかは知らないが、自らキッチンに立ち、無器用ながらも自分
の手で心を込めた菓子を作ろうとしている。

目線の下でひょこひょこ動く柔らかなくせ毛は変わらないが、真剣な瞳で分量を計
る刹那の横顔は、全てを拒絶するようなとげとげしさが薄れ、本来の真っ直ぐな
姿をさらしていた。

まだはたからみたら少年のようだが、少しずつ混じり始めた少女らしさに気付き
、アレルヤは思わず息を呑む。

長い睫毛も、大きな瞳も。根本的には変わらないはずなのに。





「ここはどのくらいの分量・・、アレルヤ?」

手を止め、思わず刹那に見いっていたアレルヤは、刹那に怪訝そうに覗き込まれ
我に帰る。

いけない、今は菓子作りの最中というのに。


「あ、ああごめん、刹那。僕、ちょっとバター見てくるから」

きょとんとした刹那の顔。何故か急に直視できなくなった。
そのまま逃げるようにアレルヤはキッチンを出た。









「あ、丁度いい感じ」

リビングに置いておいたバターの様子にほっと一息つくと、そっと皿を持ち上げ
る。

一瞬走った、痛み。

刹那は幼い。出会った頃からその意識は変わらず、そしてこのままであろうと勝
手に思っていた。いや、願っていたのかもしれない。

いつの間にか見せるようになった顔に、兄のような存在として喜ぶべきことなの
に。



『違うだろ?』


頭の中から、声が響いた。

ハレルヤ。僕の、影。



『気にくわねぇんだろ?部外者が刹那を変えたことがよ』

違う、と口にしようとして、出なかった。




『自分が変えたかったくせに。自分の手で女にしてやろうとしたくせに』

「ち、ちが・・・」

『だからものにしちまえって言ったのによ。そうやって優しい人間ぶって綺麗ぶ
ってるから、欲しいもの全部取り逃がしちまうんだろ?』

「違うっ・・・!」

『なら、あんなヤツに取られてもいいと思ってんのか?本当は欲しいくせに。取
られて笑っていられる程、お前は優しくないんだろ?』

「やめてくれ!」



会話を遮るよう、皿をテーブルに叩きつける。バターの塊がどろりと崩れた。

ハレルヤの声はぴたりとやんだが、頭はぐちゃぐちゃで、今だに彼が笑っている
気がした。

金髪の彼―グラハム・エーカー―に一瞬どろりとした妬みが生まれた。

違う彼はただの刹那のターゲットでただガンダムを知っているかも知れないから刹
那だって迷惑そうだしいやでももしもう彼が手を出していたら・・・


一瞬にして脳内を巡った、アレルヤが一番嫌いな感情。



なんて汚い。

汚い、大人なんだ。


刹那の姿を思い浮かべ、自分の浅ましさに吐き気がした。





「アレルヤ?まだか?」

キッチンから刹那の声が聞こえた。

ゆるりと頭を振るう。そうだ、自分は刹那の兄分なのだ。

汚い思いで、見ちゃいけない。


もう一度頭をふり、駆け巡った粘着質な思考を振り払う。



「ごめん、今いくよ」




そしてなにげない顔で、刹那を見よう。

アレルヤはゆっくりと、キッチンに足を向けた。





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