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OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。



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補修編で下の続き。












「あーセイエイ、終わったらちょっと来い」

テスト返却後の気だるいホームルーム。沙慈とルイスと共に今回のテスト結果について話し、あそこは採点ミスだ、あれは問題が悪いと一方的に憤る彼女を宥める沙慈の姿をぼんやりと眺めていると、担任のイアンの声がかかった。
ちらりと視線を前に向ければやけににやついたイアンと視線が合って。

またろくでもないことだな。

イアン・ヴァスティもまたCBの一員であり刹那より一足先にこの学校の教師として潜入していたが、刹那が諜報員である事情を知っている癖に容赦なく遅刻にしたり、さぼったテストを再試にしてきたりと普通の学生と同等に扱ってくるのだ。
不服に思って抗議すれば『お前さんも人並みに青春しとけ』と やけに爽やかな笑みを浮かべて刹那の頭を叩いてきた。
任務として学生になりすましているだけの刹那にとっては青春なんてものは必要ないのに。


「はーいきりーつ。礼」


やる気のない号令がかかり、お辞儀をすれば鞄を掴んでわらわらと皆が外に向かったり、そのまま談笑を再開するものがいたり。
刹那はまた明日、と手を振ってきた沙慈とルイスに手を軽く上げて答え、にやにやと人の悪い笑みを浮かべて手招きする担任の元に向かった。






よくない予感程的中するものだ。


「補習…?」
「そうだ。お前さんだけ記述赤点だったからな。」


白紙はないだろうとイアンは刹那の成績表を見て呆れていた。
「記述なんて適当に文字数入れればまず赤点はないのに…理系科目は流石マイスター候補というべきだな。国語はギリギリだが」
「秘密事項を口にするな」
「おっと」
刹那が睨みあげれば女子グループが談笑しているのに気付き、イアンが頭を掻いた。
もっとも暢気に話している少女達が、世界の紛争に楔を打とうとする常軌を逸脱した組織の存在を知るはずもないだろうが。
「ともかくだ。お前さんはここにいる限り普通の生徒として扱う。任務云々は関係なし、補習を受けなきゃ単位はやらん。喜べ、短期集中個人指導だ。」
「…いや任務だろう」
諜報任務だというのに補習で時間を取られるわけにはいかない。しかし刹那の組織の人間としては当然の考えも、このお節介な人間には通用しないが。刹那は目立たず情報を得るのが最大の任務であり、それを円滑に執り行える為にイアンが教師として潜入しているにも関わらず、刹那を遅刻魔としてあからさまに話題に取り上げたり居眠りしている刹那を躊躇なく指名してクラスの注目を集めているわけだが。刹那にとっては効率的とは思えない。


「ともかく!前々からお前さんの報告書は滅茶苦茶だとティエリアが小言を言ってるからな」

これを機に文章力をみっちり教わってこい、と頭をかき混ぜるかのように撫でられ刹那はむっとした顔で睨み付けたが、この男が決定を覆すようにも思えない。
溜め息を吐き、諦めて補習に関してのプリントを受けとる。さっさと終わらせれば補習期間も短くなるかもしれない。担当教師によってはサボりも考慮にいれる。


「まあ多少任務に関わると思うぞ」

明らかに気だるそうな刹那にイアンが意味ありげににやりと笑った。

こうもイアンが上機嫌だった理由をもっと早く気づいておけばと、刹那は後悔することになる。













空調は廊下には効いておらず、湿ってペタペタと上履きが張り付くような感覚が気持ち悪い。日本特有の梅雨という季節が始まったということを今朝テレビで知った。水が豊富にあることに越したことはないだろうが、乾燥した地域で育った刹那にとって暑さは耐えられてもこの不快な湿り気には耐えられない。
汗と湿気で張り付きそうな制服の胸元を掴んでパタパタと扇ぎながら、指定された場所に向かった。


他の科目に関してはクリスティナがハッキングで用意してくれた回答と持ち前の知識で何とかなったが、記述に関しては何も書くことが出来なかった。


テーマ、家族との思い出。

ルイスは小学校の作文かとあきれていたが、刹那はどうすることも出来ず、筆記用具を持ったままテスト終了まで硬直していたのだ。
今のロックオン達との生活を書けばよかったのかも知れない。だが、その考えに至らずただ家族との思い出を探したが、幸せな記憶は霞み、あるのは血と貧困、硝煙の匂いにまみれた記憶。

母が錆びた鋏を持ち、刹那の髪を切り男手として働かせに行かせたこと。
いい仕事と称され、アリーに少年として召集され洗脳を受けたこと。

そして神の戦士になるためにと両親に銃を向け、躊躇いなく引き金を引いたこと。

暗い部屋に滲む黒い液と死の匂い、どうして、と繰り返し絶望と驚愕に顔を引きつらせる母親。幼い子供の刹那にはまだまだ重かった、熱い鉄の塊。
とても文字では表記しきれない凄惨な思い出。
書いた所で平和なこの国ではその手のゲームのし過ぎによる妄想、もしくは精神的に不具合があるかと心配されて本気にはされないだろうか。


ここにいる皆が、刹那の手が既に血に濡れていることを知らない。

(また書かされるのだろうか)

補習でまた書けと命じられたら、何を書けばいいのだろうか。



明日ロックオンにでも相談するか。そう思い、目的の場所に到着した。補習を行う教師がイアンみたいなお節介でないことを祈る。
ノックの後扉を開くと、教育現場にはふさわしくないくらい香るアールグレイの紅茶の香り。


「やあ」


資料室を見事に私室にリフォームし、優雅にティーカップを片手にしている眩いばかりの金髪男を見た瞬間、刹那はイアンの言うことを聞かず、そのまま家にかえってしまえばよかったと猛烈に後悔した。
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