学パロ４

グラ刹♀だけどロク刹♀の方が配分大きくなりそうな気がする。

俺はただ、平穏な人生を送りたいだけだ。
余計な噂を立てられぬようグラハムが迎えにくる前に学校へ行くようになってから、朝礼まで時間が余るようになってしまった。グラハムは無駄に朝が早い。それこそ、老人ばりに。
昔は寝起きが悪い刹那を起こしてくれる彼の存在は有り難かったが、今は登校を共にすると女子に目をつけられるうえにそれを避ける為早く来るはいいがすることはなくポツンと教室にいることになってしまう。
仕方なしに何時もは本を読んで時間を潰しているのだが、今朝は欠伸をしながらひんやりとした空気に包まれた廊下を歩いていると誰かが刹那のクラスの前で立っていた。
こちらに気づくと手を振ってくる男子生徒に刹那は首を傾げる。


「おはよ」

無駄に爽やかな笑みを向けられ、澄んだ湖色の瞳を見て昨日グラハムに襲われていた男子生徒であることにようやく気づいた。

「…何か？」
「ちょっといいか？」

怪訝な顔をすると、彼は手招きしてくる。廊下で立ち話もなんだし、と呟く彼にすることもないのでついていくと、非常階段に連れ出された。
朝ということもあり人はいない。

「昨日のお礼が言いたくてさ、朝早いって聞いたから待ってた」

怪訝な顔をしている刹那に気づいたのか、男子生徒は頭を掻きながらそう切り出した。
そこまでのことはしたつもりがないといいかけるも、彼は刹那を遮り「いや、まじで貞操の危機だったから」と青ざめた顔をしてみせる。
多少リアクションが大げさではあったが本当に怖かったのだろう、ぎゅっと手を握られ何度も首を下げられる。
触れられた掌の大きさと力に刹那が戸惑いの表情を浮かべると、気づいたのか「わりぃわりぃ」とあっさり手を離してきた。
馴れ馴れしいのか気を使っているのかわからない。
グラハムともまた違うタイプの男にどう接していいのかわからず困惑していると「そういや自己紹介まだだったな」とわざとだらしなく巻いてるネクタイを正し彼は目を合わせてきた
。
「B組のニール・ディランディだ、宜しく」
「…ディランディ？確か成層圏を狙い打つという？」

学校行事に興味がない刹那も、朝礼やら壁新聞やらで度々目にする名前だった。
ニール・ディランディ。確かアーチェリー部のエースで、壁新聞には成層圏を狙い打つとか渾名はロックオンとかそんな煽りで紹介されていた気がする。

「…あんな恥ずかしい煽りで思い出されても嬉しくねぇ…」

対してニールは不本意なのか、がっくりと肩を落としてきた。
確かに成層圏とやらは誇張しすぎとは思うが実際に全国大会で優勝できる腕前らしいので新聞部もそう紹介したくなるのだろう。
「あー…頼むからロックオンって呼ぶなよ、然り気無く恥ずかしいから」
「わかったロックオン」
「早速呼ぶなよ！…あーお前も随分変な奴だな、あの変態を止めるだけあるぜ」

呆れた顔でそう言われ、何故初対面に近い相手にそんな失礼なことを言われなければならないとむっとすると「冗談だよ」とけらけら彼は笑った。

「それよりさ、今日放課後暇？」
「…用事はない」
「お礼したいんだけどさ、待ち合わせとかできない？」

一旦家帰るなら都合のいい時間にメールしてくれればいいから、と紙切れを渡される。

「うまいもん奢るからさ、な？」

何も知らない相手におごられる必要はないと眉をしかめてみせるも、ニールは手を合わせてウインクしてくる。
実際用事はないのだしそういってしまったのだから断ることもないかとコクリと頷けば、ニールは顔を明るくして「じゃあ放課後メールして！」と嬉しそうに言う。

「じゃあ寒いし中戻ろうぜ」

そう言うとニールは刹那の手を取り、非常階段の扉を開けてくれる。
一々気障な奴だ。
刹那がさりげなく手を振りほどこうとすると、無意識にしていたことなのか「わりぃ」と顔を赤くして彼は手を放してくれた。