OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。

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兄貴の独白とカタギリの独白。色々と補完してる・・・つもりです。
カタギリごめん。
ミセリコルデはあと一話で終わります・・・アンゲージも含めると4ヶ月近くかかってたのかあ・・・長かった・・・。
カタギリごめん。
ミセリコルデはあと一話で終わります・・・アンゲージも含めると4ヶ月近くかかってたのかあ・・・長かった・・・。
今日は気温が低いはずなのに、生温い風がそこには吹き、帽子からはみ出たモカブラウンの髪を揺らしていった。
ガンダム強襲から一週間たち、溶けかけていた鉄骨は冷え固まってきたが、未だに燻りをどこからかあげて、熱を帯びているという事実に改めてヴァーチェの火力を思い知る。
刹那は一瞬で逝けたのだろうか。
それとも、絶望の中消えていったのだろうか。
黒い残骸はいずれ撤去され、綺麗に整地され記念碑にでもなるのだろう。
だがそこに、刹那の名前が刻まれることもない。
ユニオンからも、CBからもなかったことにされるのだろう。
『ロックオン・ストラトス』
耳元の端末から、ティエリアの声が聞こえた。
『確認は出来たのだろう?時間だ。さっさと帰投しろ』
「…」
感情を一切含まない、淡々とした声にいつものロックオンなら苦笑しただろう。
だが今はそんな余裕もなく、ただ残骸を見つめていた。
秘密保持の為のユニオン基地の破壊。その最終確認の為に、本来ならエージェントの派遣でことが足りるそれを、ロックオンは無理を言ってやらせて貰ったのだ。
そして今、一般には立ち入り禁止となっている基地をユニオンの制服を着込み偽造IDで潜入している。
刹那が、死んだと信じたくなかったから。どこかで立っていると信じたかった。
だが、そんな仄かな希望を打ち砕くように、現実は荒涼とした黒い鉄骨の残骸として、ロックオンの前に広がっていた。
沈黙を保つロックオンに、ティエリアは溜め息をつくと切り捨てるように言った。
『刹那・F・セイエイは死んだ。その事実は変わらない』
「…っ」
『それとも、躊躇いなく引き金を引いた俺を恨みますか?』
「ティエリアっ…!」
挑むような口調にかっと頭に血が昇ったが、それは無駄なものであることに気付き、すぐにうつむいた。
「…わりぃな」
『事実を言ったまでです。俺が彼を…いえ、彼女を殺した。貴方はそれが言いたいのでしょう?それとも、あの作戦を下したスメラギ・李・ノリエガか?』
「違う…違うんだよティエリア」
『では貴方は、誰に対し憤る?誰を恨んでいる?』
理解しがたいと云わんばかりのティエリアに、ロックオンはわずかばかりに口を歪め、呟いた。
「自分、だな」
『…』
「傍にいた。手を掴もうと思えば掴めた。だけど、俺は手を伸ばせなかった。何故だと思う?」
『…ガンダムマイスターとしての貴重な戦力を失いたくなかったからだろう?当たり前のことだ』
「ははっそうだな…CBではそう思う方が正しいよな。俺は組織として正しかったわけだ。マイスターのリーダーぶって、人格者ぶってお前をたしなめていた筈なのに…
俺は刹那を戦力としてだけ見てたんだ。」
『…』
「…最低だな、俺。」
纏いつくフラッグをようやく追い払い、反応がなくなったエクシアの元に向かった時に目にしたもの。
コックピットだけえぐり去られ、死んだように横たわっているエクシアだった。
しかしその時でさえ、太陽炉の心配をまずしてしまったのだ。
「何が…守るだよ…」
自嘲めいて呟いた言葉は、風に溶けて消えていく。
最後まで近くにいたのに、あの細い手首を掴めばよかった話だったのに。
生きる理由なんていらない。ただ、生きていて欲しかった。無理矢理でもエクシアから降ろし、醜い世界から隔離すればよかった…ロックオンにはそれができたはずだ。
「何一つ変わらないな、俺。」
父を、母を、エイミーを失った時から力を求めて、これ以上失わない為にガンダムという強大な力を手にいれた。
だが結果は傍らで苦しむ少女すら救えなかった。
最後にみた刹那の澄みきった眼差しと、医務室に連れていこうとするロックオンを止めた、弱々しい瞳が焼き付いて離れない。
『…人間は、自分の責任だと考えることが、一番楽な生き物なんだな』
「?」
『これは体調管理を怠った刹那の責任でもあり、予報しきれなかったスメラギの責任でもあり、貴方の責任でもある。そして他にも様々な要因があってのことだ。
だが人間は、自分の責任と考えて悲しんで、自己満足させて完結させる。他の
責任だと思うから、処理が難しくなる』
「…」
『不毛なことだ』
そう吐き捨てるように呟いたティエリアだが、悔恨が滲んでいるのは明白だった。
ティエリアも変わった。
きっと無情に引いたと思われた引き金も、躊躇いはあったのだろう。
「…そうかもな。俺もお前も、人間だよ。」
『俺は別に…』
「お前だって責任感じてるんだろ?いい傾向だよ」
そう言えばティエリアは言葉に詰まり、沈黙した。自分を恨むのかと言ったのも、後悔があった証だ。
恐らくティエリアは罪悪感を薄める為に言ってくれたのだろう。出会った当初は機械みたいな奴だと思ったが、最近は人間味を出し始めた。
「ティエリアに慰められるなんてな」
『なっ俺は別に!』
「ありがとな…だけど、もう少し居させてくれ…すぐ帰るから」
『…』
「一人に、させてくれ」
自分で語尾が震えていることに気づいた。ティエリアも今度は何も言わず、無言で通信を切ってくれた。
改めて目の前の惨状をみる。
絶望よりなお深い黒色の鉄骨が、お前が引き起こしたことだとロックオンを責めているようで。
「いや、あいつなら責めもしないな…」
ポツリと呟いた言葉に自嘲めいた笑みを浮かべた。責められ、罵倒された方がまだましだった。だがトレミーのクルーも誰も責めなかった。むしろティエリアのように各々が自分を責めているのだろう。
不意に、クリアだったはずの視界が歪んだ。そして水分が瞬きすると頬に落ち、
伝っていく。
そう言えば、涙も人間が悲しんでいる自分を哀れむ為に流すと聞いたことがある。
これは刹那の為の涙ではなく、エゴから生まれた涙なのだ。
汚いな、俺
しかしどこか冷めた心とは裏腹に、涙は止まらなかった。
涙は立ち入り禁止のテープを超え、廃墟に飛んで散っていく。
「ごめんな」
もうすぐ刹那が望んでいた戦場に帰る。二度と彼女は自分の隣に立たないだろう。
彼女に、戦場で生きる以外の楽しみを教えたかった。誰もがお前の死を望んでいなかったと告げたかった。
お前を好いている人間がいると、伝えたかった。
だがもう伝わらない。
彼女は最後まで自分の居場所は戦場だと信じ、散ったのだから。
そろそろ本当に時間だ。
永遠に消えない悔恨を胸に踵を返そうとすると、話し声が聞こえた。
兵士のふりをしているとはいえ、敵地であまり顔を見られることは望ましくない。
慌て涙をぬぐい、帽子を深く被り直して敬礼をした。
白衣の男と、金髪の男だった。
二人は軽く会釈しながら通り過ぎようとしたが、すれ違い際に金髪の男と視線がかち合う。
翠の瞳はロックオンを見ると僅かに笑みを浮かべるように、挑むように細められた。
なんだ…?
ほんの一瞬。すぐに後ろ姿となった二人組をロックオンは見つめた。
あの男、何処かで会った…?
だが記憶を探ってもやはりあの男に見覚えはなく、ロックオンは奇妙な胸のざわつきを覚えたまま、ただ一人廃墟に立ち尽くした。
あの軍人のエメラルドのような瞳には…奇妙な愉悦と、背筋が凍るような、狂気が孕んでいた。
「知り合いかい?」
じっとグラハムを見つめてくる男を振り返りながら、カタギリは隣を歩く彼に話しかけた。
「まさか。」
「でも一瞬笑ったよね君」
「そうか?…まあ強いて言えば似ていたな。」
「え?」
「視線の強さが、セツナに」
そう心底楽しそうに言うグラハムとは対象的に、カタギリは少しだけ顔を暗くした。
「…これだけの犠牲を払っても君は後悔しないのかい?」
「忠告はした。必ずCBは来ると…恨むなら無能な上司を恨みたまえ」
そうしれっといい放つ友に、カタギリは嫌な汗が背筋を伝うのを感じる。
本当に何も思っていないようだ。思えば親友を銃で脅すような男だ、今更なのかもしれない。
「しかし、こうも上手く行くとは思わなかったな」
「…彼女を助けた後コックピットを撃って、パイロットは死んだとか報告するのは無茶だと思ったけどね。おかげで君が唯一持ち帰ったお土産さえ満足に研究することも出来なかったよ。それで君にお咎めなしって、世の中理不尽だね…」
「ああ、全くだな。」
動揺する心を隠し、呆れたように言えば、くつくつと喉を鳴らせて笑った。本当に本心からそう思っているのだろうか。
勘と悪運は強いと前々から思っていたが、ここまで極端に運命の女神に好かれる男も珍しいのではないか。
いや、彼の場合悪魔に好かれているのかもしれない。
「…ねぇ、その、セツナ君は幸せなのかい?君に愛されて…」
本心から呟いた言葉に、グラハムは押し黙った。
地雷を踏んだか、そう身構えればグラハムは笑っていた。
「当たり前だろう。」
女性ならばだれもが惚れそうな、蕩けるばかりの笑み。だがそれは張り付いた仮面のようで、カタギリに戦慄が走った。
「…いや、私が幸せにする。捕虜にされるよりもCBにいるよりも何百倍も。そう、やっと彼女が堕ちたのだよ!ゆっくりと壊してきた甲斐があった。年内には子供も産まれるんだ!」
お気に入りの玩具を手にいれたのかのように無邪気にいい放つ目の前の男に、カタギリは顔の筋肉を総動員して笑みを作ることしか出来なかった。
ああ、狂ってしまった。
セツナと呼ばれる少女と出会ってから、彼は狂っていたのだ。
だから躊躇いなく友人に銃を向け、あんなに愛していたガンダムすら破壊し、あまつさえ基地さえも間接的だが破壊し目の前の大惨事を起こしたのだ。
「君には感謝しているよカタギリ!今度彼女に会わせよう、きっと気にいるはずだ。」
「グラハム…」
笑って頷きながらも、横ではしゃぐ男に、カタギリは覆しようのない恐怖と、虚しさを覚えた。
それは狂気で彼女を支配しているだけなんだよ、グラハム。
まだ見ぬ彼女の瞳には、本当にグラハムが映っているのだろうか?
「…それは君にとっても幸せなのかい?グラハム…」
いつの間にか立ち止まり、呟いた言葉は目の前をはしゃぐように歩く友に届かず、燻った有機物と共に空に消えた。
「、動いた」
斜陽の中、ぼんやりと窓を見つめていた一人の少女が、驚いたように目を丸くした。
恐る恐る手を不釣合いなほどに膨らんだ腹部におけば、とくとくと鼓動を感じ、少女は目を細めて微笑を浮かべた。教会にある慈母の像のように、優しい笑みだった。
「・・・お前は、幸せ者だ」
自らの胎内に宿る命を慈しむように撫でながら、少女は言い聞かせるように、子守唄のようなリズムで呟いた。
まるで、自分にも言い聞かせるように。
「・・・幸せ者だ」
急に、少女が腹部を撫でるのをやめた。
わずかに身をよじらせたせいで足首につけられた鎖が小さく鳴り、手錠がすれて新しいすれ傷を作っていく。この子が産まれたら外すといってくれているが、いい加減痛みが酷いので外して欲しい。もう、逃げ出そうなんて考えていないのに。
居場所はここ以外ないのだから。
少女は腹部に手を置きながら、窓を見つめた。
外に久しく出ていないが、風も陽光も、思い出すことが出来る。この子が生まれるころには、グラハムは外に出してくれるのだろうか。
大きな一枚ガラスで出来ている窓の先を見つめた。
飛行機がゆっくりと白い筋を吐き出しながら、空を横切っていく。
もう、空には居場所はないというのに。
地上には、愛する存在と愛してくれる存在がいるというのに。
それでも少女は、空を見つめ続けていた。
その先に続く、闇色の宙を見通すかのように、グラハムが帰ってくるまでずっと見つめ続けていた。
とらわれたのは、誰?
幸せになったものは、誰?
ガンダム強襲から一週間たち、溶けかけていた鉄骨は冷え固まってきたが、未だに燻りをどこからかあげて、熱を帯びているという事実に改めてヴァーチェの火力を思い知る。
刹那は一瞬で逝けたのだろうか。
それとも、絶望の中消えていったのだろうか。
黒い残骸はいずれ撤去され、綺麗に整地され記念碑にでもなるのだろう。
だがそこに、刹那の名前が刻まれることもない。
ユニオンからも、CBからもなかったことにされるのだろう。
『ロックオン・ストラトス』
耳元の端末から、ティエリアの声が聞こえた。
『確認は出来たのだろう?時間だ。さっさと帰投しろ』
「…」
感情を一切含まない、淡々とした声にいつものロックオンなら苦笑しただろう。
だが今はそんな余裕もなく、ただ残骸を見つめていた。
秘密保持の為のユニオン基地の破壊。その最終確認の為に、本来ならエージェントの派遣でことが足りるそれを、ロックオンは無理を言ってやらせて貰ったのだ。
そして今、一般には立ち入り禁止となっている基地をユニオンの制服を着込み偽造IDで潜入している。
刹那が、死んだと信じたくなかったから。どこかで立っていると信じたかった。
だが、そんな仄かな希望を打ち砕くように、現実は荒涼とした黒い鉄骨の残骸として、ロックオンの前に広がっていた。
沈黙を保つロックオンに、ティエリアは溜め息をつくと切り捨てるように言った。
『刹那・F・セイエイは死んだ。その事実は変わらない』
「…っ」
『それとも、躊躇いなく引き金を引いた俺を恨みますか?』
「ティエリアっ…!」
挑むような口調にかっと頭に血が昇ったが、それは無駄なものであることに気付き、すぐにうつむいた。
「…わりぃな」
『事実を言ったまでです。俺が彼を…いえ、彼女を殺した。貴方はそれが言いたいのでしょう?それとも、あの作戦を下したスメラギ・李・ノリエガか?』
「違う…違うんだよティエリア」
『では貴方は、誰に対し憤る?誰を恨んでいる?』
理解しがたいと云わんばかりのティエリアに、ロックオンはわずかばかりに口を歪め、呟いた。
「自分、だな」
『…』
「傍にいた。手を掴もうと思えば掴めた。だけど、俺は手を伸ばせなかった。何故だと思う?」
『…ガンダムマイスターとしての貴重な戦力を失いたくなかったからだろう?当たり前のことだ』
「ははっそうだな…CBではそう思う方が正しいよな。俺は組織として正しかったわけだ。マイスターのリーダーぶって、人格者ぶってお前をたしなめていた筈なのに…
俺は刹那を戦力としてだけ見てたんだ。」
『…』
「…最低だな、俺。」
纏いつくフラッグをようやく追い払い、反応がなくなったエクシアの元に向かった時に目にしたもの。
コックピットだけえぐり去られ、死んだように横たわっているエクシアだった。
しかしその時でさえ、太陽炉の心配をまずしてしまったのだ。
「何が…守るだよ…」
自嘲めいて呟いた言葉は、風に溶けて消えていく。
最後まで近くにいたのに、あの細い手首を掴めばよかった話だったのに。
生きる理由なんていらない。ただ、生きていて欲しかった。無理矢理でもエクシアから降ろし、醜い世界から隔離すればよかった…ロックオンにはそれができたはずだ。
「何一つ変わらないな、俺。」
父を、母を、エイミーを失った時から力を求めて、これ以上失わない為にガンダムという強大な力を手にいれた。
だが結果は傍らで苦しむ少女すら救えなかった。
最後にみた刹那の澄みきった眼差しと、医務室に連れていこうとするロックオンを止めた、弱々しい瞳が焼き付いて離れない。
『…人間は、自分の責任だと考えることが、一番楽な生き物なんだな』
「?」
『これは体調管理を怠った刹那の責任でもあり、予報しきれなかったスメラギの責任でもあり、貴方の責任でもある。そして他にも様々な要因があってのことだ。
だが人間は、自分の責任と考えて悲しんで、自己満足させて完結させる。他の
責任だと思うから、処理が難しくなる』
「…」
『不毛なことだ』
そう吐き捨てるように呟いたティエリアだが、悔恨が滲んでいるのは明白だった。
ティエリアも変わった。
きっと無情に引いたと思われた引き金も、躊躇いはあったのだろう。
「…そうかもな。俺もお前も、人間だよ。」
『俺は別に…』
「お前だって責任感じてるんだろ?いい傾向だよ」
そう言えばティエリアは言葉に詰まり、沈黙した。自分を恨むのかと言ったのも、後悔があった証だ。
恐らくティエリアは罪悪感を薄める為に言ってくれたのだろう。出会った当初は機械みたいな奴だと思ったが、最近は人間味を出し始めた。
「ティエリアに慰められるなんてな」
『なっ俺は別に!』
「ありがとな…だけど、もう少し居させてくれ…すぐ帰るから」
『…』
「一人に、させてくれ」
自分で語尾が震えていることに気づいた。ティエリアも今度は何も言わず、無言で通信を切ってくれた。
改めて目の前の惨状をみる。
絶望よりなお深い黒色の鉄骨が、お前が引き起こしたことだとロックオンを責めているようで。
「いや、あいつなら責めもしないな…」
ポツリと呟いた言葉に自嘲めいた笑みを浮かべた。責められ、罵倒された方がまだましだった。だがトレミーのクルーも誰も責めなかった。むしろティエリアのように各々が自分を責めているのだろう。
不意に、クリアだったはずの視界が歪んだ。そして水分が瞬きすると頬に落ち、
伝っていく。
そう言えば、涙も人間が悲しんでいる自分を哀れむ為に流すと聞いたことがある。
これは刹那の為の涙ではなく、エゴから生まれた涙なのだ。
汚いな、俺
しかしどこか冷めた心とは裏腹に、涙は止まらなかった。
涙は立ち入り禁止のテープを超え、廃墟に飛んで散っていく。
「ごめんな」
もうすぐ刹那が望んでいた戦場に帰る。二度と彼女は自分の隣に立たないだろう。
彼女に、戦場で生きる以外の楽しみを教えたかった。誰もがお前の死を望んでいなかったと告げたかった。
お前を好いている人間がいると、伝えたかった。
だがもう伝わらない。
彼女は最後まで自分の居場所は戦場だと信じ、散ったのだから。
そろそろ本当に時間だ。
永遠に消えない悔恨を胸に踵を返そうとすると、話し声が聞こえた。
兵士のふりをしているとはいえ、敵地であまり顔を見られることは望ましくない。
慌て涙をぬぐい、帽子を深く被り直して敬礼をした。
白衣の男と、金髪の男だった。
二人は軽く会釈しながら通り過ぎようとしたが、すれ違い際に金髪の男と視線がかち合う。
翠の瞳はロックオンを見ると僅かに笑みを浮かべるように、挑むように細められた。
なんだ…?
ほんの一瞬。すぐに後ろ姿となった二人組をロックオンは見つめた。
あの男、何処かで会った…?
だが記憶を探ってもやはりあの男に見覚えはなく、ロックオンは奇妙な胸のざわつきを覚えたまま、ただ一人廃墟に立ち尽くした。
あの軍人のエメラルドのような瞳には…奇妙な愉悦と、背筋が凍るような、狂気が孕んでいた。
「知り合いかい?」
じっとグラハムを見つめてくる男を振り返りながら、カタギリは隣を歩く彼に話しかけた。
「まさか。」
「でも一瞬笑ったよね君」
「そうか?…まあ強いて言えば似ていたな。」
「え?」
「視線の強さが、セツナに」
そう心底楽しそうに言うグラハムとは対象的に、カタギリは少しだけ顔を暗くした。
「…これだけの犠牲を払っても君は後悔しないのかい?」
「忠告はした。必ずCBは来ると…恨むなら無能な上司を恨みたまえ」
そうしれっといい放つ友に、カタギリは嫌な汗が背筋を伝うのを感じる。
本当に何も思っていないようだ。思えば親友を銃で脅すような男だ、今更なのかもしれない。
「しかし、こうも上手く行くとは思わなかったな」
「…彼女を助けた後コックピットを撃って、パイロットは死んだとか報告するのは無茶だと思ったけどね。おかげで君が唯一持ち帰ったお土産さえ満足に研究することも出来なかったよ。それで君にお咎めなしって、世の中理不尽だね…」
「ああ、全くだな。」
動揺する心を隠し、呆れたように言えば、くつくつと喉を鳴らせて笑った。本当に本心からそう思っているのだろうか。
勘と悪運は強いと前々から思っていたが、ここまで極端に運命の女神に好かれる男も珍しいのではないか。
いや、彼の場合悪魔に好かれているのかもしれない。
「…ねぇ、その、セツナ君は幸せなのかい?君に愛されて…」
本心から呟いた言葉に、グラハムは押し黙った。
地雷を踏んだか、そう身構えればグラハムは笑っていた。
「当たり前だろう。」
女性ならばだれもが惚れそうな、蕩けるばかりの笑み。だがそれは張り付いた仮面のようで、カタギリに戦慄が走った。
「…いや、私が幸せにする。捕虜にされるよりもCBにいるよりも何百倍も。そう、やっと彼女が堕ちたのだよ!ゆっくりと壊してきた甲斐があった。年内には子供も産まれるんだ!」
お気に入りの玩具を手にいれたのかのように無邪気にいい放つ目の前の男に、カタギリは顔の筋肉を総動員して笑みを作ることしか出来なかった。
ああ、狂ってしまった。
セツナと呼ばれる少女と出会ってから、彼は狂っていたのだ。
だから躊躇いなく友人に銃を向け、あんなに愛していたガンダムすら破壊し、あまつさえ基地さえも間接的だが破壊し目の前の大惨事を起こしたのだ。
「君には感謝しているよカタギリ!今度彼女に会わせよう、きっと気にいるはずだ。」
「グラハム…」
笑って頷きながらも、横ではしゃぐ男に、カタギリは覆しようのない恐怖と、虚しさを覚えた。
それは狂気で彼女を支配しているだけなんだよ、グラハム。
まだ見ぬ彼女の瞳には、本当にグラハムが映っているのだろうか?
「…それは君にとっても幸せなのかい?グラハム…」
いつの間にか立ち止まり、呟いた言葉は目の前をはしゃぐように歩く友に届かず、燻った有機物と共に空に消えた。
「、動いた」
斜陽の中、ぼんやりと窓を見つめていた一人の少女が、驚いたように目を丸くした。
恐る恐る手を不釣合いなほどに膨らんだ腹部におけば、とくとくと鼓動を感じ、少女は目を細めて微笑を浮かべた。教会にある慈母の像のように、優しい笑みだった。
「・・・お前は、幸せ者だ」
自らの胎内に宿る命を慈しむように撫でながら、少女は言い聞かせるように、子守唄のようなリズムで呟いた。
まるで、自分にも言い聞かせるように。
「・・・幸せ者だ」
急に、少女が腹部を撫でるのをやめた。
わずかに身をよじらせたせいで足首につけられた鎖が小さく鳴り、手錠がすれて新しいすれ傷を作っていく。この子が産まれたら外すといってくれているが、いい加減痛みが酷いので外して欲しい。もう、逃げ出そうなんて考えていないのに。
居場所はここ以外ないのだから。
少女は腹部に手を置きながら、窓を見つめた。
外に久しく出ていないが、風も陽光も、思い出すことが出来る。この子が生まれるころには、グラハムは外に出してくれるのだろうか。
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飛行機がゆっくりと白い筋を吐き出しながら、空を横切っていく。
もう、空には居場所はないというのに。
地上には、愛する存在と愛してくれる存在がいるというのに。
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初めての方は「ハジメニ」を読んでください。わからずに突き進むと大変なことになります。
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