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OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。



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追悼しない、っていったくせにグラ刹やるっていったくせに結局ロク刹書いてます。しかも幸せじゃないという。
元ネタは拍手を頂いた方からです。有り難うございます。
兄貴の絵見るだけで泣ける。
でも、信じてるので。








何故、自分はここにいるのだろう
ここで息をしているのだろう
生きるのに不可欠だと思っていたものが欠けているのに




熱が欲しい





経済特区日本。
宇宙の死闘が嘘のような、賑やかさ。平和さ。
それは、戦争への無関心をそのまま意味する。
少し湿っぽい匂いがする部屋に帰ってきた時、睡眠をとることと筋トレくらいしかしない部屋でも、日常に『帰ってきた』と思えた。
だが、今は立ち尽くし、何も考えられない。
戦うことで、憎しみを向けることで無理矢理掻き消してきた喪失感が、空っぽな部屋を見ることで大波のように襲い、刹那の胸から何もかもを取り去っていった。

大きな穴に、冷気が染み込むような。
ピースが欠けたパズルを垂直に立てた時のように、なにかが一挙に崩れていく。

帰ってくる度に挨拶してくるお節介な隣人に今日は会わなかったからだ。

そう自分を無理矢理説得させ、ひとまず疲れを癒そうとベッドに倒れる。
舞い上がる埃。そういえば、シーツを洗い忘れていた。
慣れたことなので構わず猫のように頭をこすりつけると、鼻腔にふわりと、埃以外の匂いがした。
慣れ親しんだ、コロンの匂い。
当初は慣れなかったが、次第に匂いに包まれることが心地よくなり、近くにあるものが当然となった。
この匂いは。

匂いを常に纏っていた人物が脳裏にフラッシュバックする。
それに気付いた時、刹那は咄嗟に顔を起こした。

思い出すな、思い出してはいけない。
がむしゃらにシーツを掴み、引き剥がす。再び匂いが鼻先をふわりと掠めていくのを、首を振って否定する。
後ろを見てはいけない。
なくしたものを思い返してはいけない。
忘れてしまえ。かつてここに優しさがあったことを。
湯水のように浴び、慣れきったた愛があったことを。
そうして彼といたことが当然だと思っていたことを。

コインランドリーに出掛けようと、財布を手にする。
その時、ピッと電子音が聞こえた。
『刹那』
「え?」

部屋を振り返る。誰もいない筈の部屋。だが確かに名を呼ぶ声が聞こえた。

『元気か?たまには、布団干した方がいいぜ。前やっただろ?お日様の匂いがして、よく寝れるって』
小さな、確かに彼の声。
音源を探すと、床にここ専用の端末が転がっていた。シーツを剥がした時に落ちて、電源が入ってしまったらしい。
いつものように連絡なしで彼が来て、寝ていた刹那を布団から引き剥がすと、いきなりシーツや布団を干し出した。
「こうするとな、お日様の匂いを吸い込むんだぜ。」
そう笑って、午後は二人で干したシーツの上で寝転んだ。というよりは抱き締められ動けなかったのだが。
「な、匂いするだろ?」
綺麗な翡翠がそう笑いかけてきて、確かに暖かいシーツは心地よかったが悔しくて、「お前の匂いでわからない」と言ってしまった。
本当は近づくと彼の首元から薫る、彼らしい爽やかな香りが好きだったのだが。
「素直になれよ。」
だがひねくれた刹那の返しに気を悪くすることもなく、彼は若干強い力で抱き締めてきただけだった。
その手がすがるように刹那の頬に当たり、これはかつて彼が家族と共にやっていたことであることに気づいたが、何もできず目を瞑ることしか出来なかった。

あの時太陽の匂いがすると微笑めば、
大きいくせに小さく見えた彼を抱き締め返せば、


やめろ
失ったものは何をしても返ってこないと、経験上知っているではないか。
沢山失った。自らが血の海に沈めた時も、自分の代わりに偶然、という時もあった。
原因となったアリー・アル・サーシェスは死んだ。
だけど、優しかったあいつが、誰よりも温かかったものは、返ってこない。
終わらせようとするためにガンダムに乗ったのに、掬いきれずどんどんと溢していく。



『刹那、ちゃんと飯食ってるか?』
『寝てるのか?』
『近所付き合いは、うまく言っているのか?』
『刹那』
『せつな・・・』

「惑わすなっ・・・!」
シーツを抱いたまま、残酷に彼の声を流し続ける端末を拾いあげる。
あの時心地よいと思っていたテノール。しかし今は、ただ乾き抉れた心がさらに抉られ、再び血が溢れているようで、苦しくて苦しくて仕方がない。
強制的に麻痺させていた五感が彼を求め、悲鳴を上げている。
出来ることならシーツを引き裂き燃やして、端末を投げつけ粉々に砕きたかった。
それで忘れさることが出来るなら。
だが震える手は放り投げることも出来ず、愚かな自分の瞳は端末に移る映像に釘付けである。
画面の中の彼は、太陽のような笑みを浮かべていた。
いつも、刹那に接する時のような顔を、無機質な端末にまで向けて浮かべていたと考えると可笑しくて、しかしそれが一層喪失を浮き彫りにして。

『まーた居留守か刹那!わかってるんだからな、いるの!』
最初は煩わしいだけだった。
冷えきった心に突如湯をかけられ、急激に自らの内部に起きた変化に戸惑っていたのかもしれない。
『デリバリーやファーストフードは駄目だからな、だからお前は背が伸びないんだよ、牛乳のめ牛乳!』
どうしてミッションに関係ないことを留守電に残していくのかわからなかった。不要なことだとろくに見ず、適当に聞き流していた。だが連絡し返さないでいると彼はいきなりやって来て、刹那の私生活に文句をいいに来る。

「やめろ・・・」
画面の中で笑い続ける彼。
慈しむような声。
褪せずにシーツにつく匂い。
視覚が聴覚が嗅覚が、彼だと認識している。
だが、触覚がない。
熱がない。
いつも撫で上げ、触れ、抱き締めてくれた時に感じた生命の証拠だけが、
この部屋にはどこにもない。

「ロック・・・」
端末に、水が落ちた。笑っていた彼の顔が、歪み滲む。
違う、俺が欲しいのは、
こんな崩れやすい虚像じゃないんだ

『今度チェックしにいくからな!もしやってなかったら・・・強制遂行のち、キスの刑!』
嘘つくな。
俺はお前が言ったことを何一つしていない。なのに、お前はこない。
そしてどこにももういない。
この世界にも、日常にも。
ただ記録と匂いと記憶の欠片の中で、喪失に嘆いている俺を、優しい顔して、哄笑しているだけだ。
匂いは消せる、記録も消せる。
だがお前に触れていた記憶は、触覚は消せずにいつまでも求めようと虚空に手を這わせている。


「ロックオン・ストラトスっ・・・!」
熱が、欲しい。
五感があいつを必要として、窒息しそうだ。
いっそのこと、楽にしてほしかった。
あの時、引き金を引いて。残されるものの悲しみの連鎖から。
だが俺は生きてしまった。
生きる限り俺は、あがかなければいけない。
お前がいない中、酸欠しそうなまままた失う恐怖に怯えて。




「ロック、オン・・・!!」

シーツをきつく抱き締める。
いまだ耳を、テノールが通り抜けていく。
こうもしなければ、『熱が欲しい』と暴れ、千切れそうな体を日常に繋ぎ止めることが出来なかった。
宇宙と違い、空を舞わない涙は重力にしたがい、端末の画面をただただ滲ませていった。


こんなものじゃなくて、
熱が、欲しい。








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ここはグラハム・エーカー至上主義グラ刹になりそうな予感のする二次創作腐女子ブログです。
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管理人:流離

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