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OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。



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第三弾。ものすごい長いです。詰め込みすぎました。
今回も兄貴視点です。ここから少しロク→←刹・・・になりかけ?という感じでしょうか。多分この連載の中で唯一光に近い感じ・・・になるのでしょうか?
「あれ、これグラ刹連載じゃないの?」と思われた方もいると思いますが後半から兄貴の出番は限りなく減るのでご安心を(何を?)
次回からやっとハムがでる・・・はず!

あれから数週間。
刹那は相変わらず睡眠薬を服用し、やつれてはいたものの食欲は回復したようで、点滴を受けなくても大丈夫になっていた。
あの日から少しでも彼女を支えられたら、とロックオンは頻繁に刹那の部屋に来るようになった。
当初刹那が嫌がるならすぐにでも出ていくつもりだったが、彼女は何も言わずにベッドに腰掛け、ロックオンが側にいることを拒絶しなかったのは幸いだ。もっとも初めて刹那の部屋に訪れたあの日のように、本当に辛そうな姿をみせることはなかったけど。
余計なお節介なのはわかっているし、性というものに深いトラウマを持つ彼女の側に、男である自分がいるのはいいことでないかもしれない。
が、それでもあのまま苦しんでいる彼女を放って置くことはできなかった。

待機中の今も「何か欲しいものあるか?」と問えば少し顔を赤くして「オレンジジュース」と答えてくれるようになったのも嬉しかった。今ではロックオンが持ってくれば簡単な流動食も口にするようになり、少しだけ血色がよくなったのは気のせいではないだろう。
少しでも自分の存在が彼女の支えになれたのかと、素直に喜んでいた。その時は。

それが彼女を救いきれないロックオンのエゴだとしても。

「しかし林檎ジュースの方がお前さん好きじゃなかったっけ?いいのか?」

刹那をなるべく怖がらせないようにと入り口付近からジュースの入ったボトルを投げてみれば、彼女は一瞬小首を傾げつつボトルを受けとる。

「最近はオレンジの方が好みだ。林檎は甘すぎる」
「ふーん」

食事をまともにとってなかったから好みが変わってしまったのかもしれない。そう軽く考えながら彼もまた持ってきたオレンジジュースに口をつけた。100%なのかやけに酸味が強い。
俺あんまり酸っぱいの好きじゃないんだけどなーとズズズと吸っていると、今まで静かに飲んでいた刹那がじっと此方に目線を向けてきた。

「ん、どうした?」

答えることもなく、彼女はじっとロックオンに視線を向けてくる。
あの日の彼女の瞳は怯えと憎しみが混じっていて、ろくにロックオンのことを見ていなかった気がする。だが今の刹那の視線は違った。
痩せ細った少女の瞳には不釣り合いなくらいに強く、しかし好天の時の海のように穏やかに澄みきっていた。ミッション前のギラギラとした灼熱の視線とも違う、包み込むような純粋な強さ。
その瞳にロックオンは胸に氷を落とされたような感覚がした。
まだ16年しか生きていない少女にはあり得ない澄みきった落ち着き。普段の苛烈な瞳も小娘には似つかわしくないのだが、全てを見通す空のようなこの視線は、まるで。

「ロックオン・ストラトス」
「お、おうどうした、いきなりかしこまって」

揺るぎない彼女の瞳に強い輝きが戻っていた。しかしそこには生を渇望するギラつきはなく、暗赤の瞳には凪のような静けさだけ。
胸騒ぎがした。
ロックオンは、このような瞳に見覚えがある。

「もし次のミッションにユニオンが介入してきたら、俺は、・・・」

「刹那…?」

世界で一番澄み切った、美しい視線。
まるで…先を見越しているような。
揺るぎない覚悟。
ドクンドクンと心音が煩く騒ぎ立てる。




刹那が口をゆっくりと開いた。その瞬間、緊迫した二人の間をアラームが切り裂いた。


「召集だ、行くぞ」
「あ、ああ…」

いち早くボトルを手放し、背を向ける刹那の後に従った。
骨張った小さな体。掴まなければ消えてしまいそうなくらい小さな背中に、ロックオンはとてつもなく胸がざわめく。
言葉の続きを刹那が言わなくてよかった、とロックオンは心から思った。
…あれは、死地に向かおうとしている目だ。



『エクシアとデュナメスには、ユニオン領カナダに行ってもらうわ』

こんな時に、ユニオンが絡むなんて。モニターに移る戦術予報士の作戦内容に、ロックオンは顔を暗くした。

『カナダの森林地帯にテロリストが潜伏しているとの情報が入ったの。アメリカ主要都市のテロの準備をするには彼処は絶好の場所だからね。』

今のカナダは真冬。アメリカ本土にテロを仕掛けるなら24世紀でも広大な自然が残り、雪でレーダーの性能も落ちる隣国のカナダからが一番早い。さらにカナダ
はAEU系の人間も多いのであまりユニオンも軍備を置けないはずだ。
さらに各軍は新型ガンダムに恐れてテロをないがしろにして自国の軍備に精を出している。狙うなら今が絶好のチャンスだ。

『トリニティだけ世界に注目されては困るわ。真の太陽炉を所有するガンダムとして、派手に叩き潰しちゃってこっちもいることを見せつけて頂戴。』
ユニオンも気付かないくらいにのろまじゃないと思うけど。そう肩を竦めるスメラギに、ロックオンは違和感を覚えた。

「俺達を誘き寄せる為の囮…って可能性もあるんですか?タクラマカンの時みたいに。」

刹那をちらりと覗きこめば、モニターを見つめていた彼女の顔が一瞬強張っていた。震える拳。
だがすぐに震えは収まり、モニターを静かにただ見ていた。
今までユニオン関係のことを見ただけで殺意と怒りを滲ませていたというのに。

『恐らく。細々としたテロの殲滅は無理でしょうけどテロリストはMSを所有している位の規模ならユニオンもマークしているはず。こういう時だからこそAEUや人革から抜け駆けして滷獲しようとする奴らもいると思うわ。本来なら単機でもいけるミッションだけど、念のためにペアにしておくわ。』

だから気を抜かないでね、とスメラギは妖艶に笑った。しかし彼女の顔にも緊張及び睡眠不足による疲労が色濃く浮き出ている。
彼女もまた予想だにしていなかったトリニティの出現、それにより瞬く間に変えられた各勢力に対する戦術を考えるのに必死なのだろう。

『ミッション開始まであと一時間。作戦に変更はなし、それまで各自機体に待機して』
「りょーかいっ」
「了解」

おかしい。

感情を露にせず淡々とした刹那の返事は、以前の彼女なら私情を持ち込まなくなったと喜ぶべきものの筈なのに。
『ミッション成功を祈るわ』と言う言葉と共に映像が消えた。
やはり数日前と刹那の様子は明らかに違う。
だが明確な答えが出る前に刹那は背を向け、格納庫に向かった。違和感を抱えつつもロックオンもまたハロを抱え、ブリーフィングルームから出ようとする。


『待って、ロックオン。』

消えたと思ったモニターから、今度は音声だけが聞こえた。

「ミススメラギ?」
『…今回だけは私、自信がないのよ。』
戦術予報士としてあるまじき台詞、いや、それ以上にいつも自信に満ちていた彼女の瞳に揺らぎがあることにロックオンは驚き、足を止める。

『キュリオスとヴァーチェは別の任務に向かわせなきゃいけないから仕方ないし、そちらの方のプランは外れることはないと思うのだけど…正直、貴方達のプランはあまり当てにならないと思う。ヴェーダが信用出来ない今各国の情勢も自分達で調べなければならないし、それに、…今の刹那は不安定でどう動くかわからないわ』

ロックオンは一瞬ドキリとした。刹那は確かに見るからにやつれたものの、任務には支障はなかったはずだ。

『私も人の心理を読めたらね…ロックオン、今は刹那に何が起こったのか聞かないでおいてあげる。だけどこのミッションが終わったら真実を報告するように。』

「ミススメラギ!報告に嘘はっ」
『ロックオン、これは義務よ。』

ぴしゃりと切り捨てられた言葉に、ロックオンは唇を噛んだ。
言わないでくれ、とすがりつく刹那の弱々しい姿が浮かび、この場にはいないスメラギを睨み付ける。
『貴方が刹那を心配する理由はわかるし、刹那も…辛いのはわかるわ。同じ女性として…私もされたら言いたくないもの』
「ミススメラギっ!?知ってて…!」
『運び込まれた瞬間になんとなくわかったわ…伊達に戦術予報士やってないんだから』
彼女は気づいていた。
気づいていたのに刹那を精密検査に通さず戦わせ、果てはユニオンと対峙させようというのか。

「だったら何故、刹那を…戦わせるんだ!!あんなボロボロの状態でっ!女の貴女ならわかるだろう、刹那の痛みが…!!」
『仕方ないのよっ!』


ダンッと真っ黒になったモニターから壁を叩く音が聞こえた。
彼女は今、声だけしかわからない。だが彼女の悲痛な叫びに感情的になっていたロックオンの頭はさっと冷えた。

『今、刹那を外したら戦力に支障がでる。マイスターの替えなんてそうそういないわ。…私達は、成さなければいけないのよ。扮装根絶を…
あの子には時間をかけてメンタルケアが必要だってこともわかってる…でも、仕方ないのよ…』
「ミススメラギ…」

マイスターを指揮するものとして、これは彼女にとって当然の決断だ。彼女も非情になりきれず苦悩しているに違いない。
…スメラギばかりが責められないのだ。ロックオンとて、刹那をマイスターとして見て完全に救うことは出来なかった。
スメラギも苦しんでいるのだ、マイスターを人として扱えず、駒として見なければいけない事実を。
だからこそ彼女は、アルコールに手を出すのだろう。


『…でももしこのミッションが完遂できたら、各陣営も自国の防衛に手を回してテロリストも動けなくなる筈。トリニティの動向次第だけど、暫くは沈黙する筈だわ。…その間に、刹那の処置を決めます』
「でも、エクシアから降ろしたら刹那は…」

刹那は自身の容態よりも戦えなくなることを恐れている。しかしスメラギはそのことも予測済みだったようで、『わかってるわ』と告げた。

『わかってる、だからなるべく短期間で刹那のケアを行うわ。…それが刹那にとっていいことかわからないけど。
それとロックオン、お願いがあるの。…これは戦術予測士としてでなく私個人のお願い。』

その瞬間ブリーフィングルームに出撃準備の警報が鳴り響いた。
ロックオンはヘルメットを被りながら、スメラギの言葉を待つ。




『だからそれまで、刹那を守ってあげて。』
「ロックオン、配置につけ!」


割り込んできたイアンの声に、ロックオンはモニターに「りょーかいっ」と叫んで走り出した。

「…言われなくたって、わかってますよ!」

スメラギの言葉を反芻しながら、ロックオンは格納庫への道を走った。









『ミッション開始まであと5分です。』
フェルトの声を聞きながら、ハロをセットした。
生体認証を行い計器の調整をしていると、音声通信が入った。
『ロックオン』
「刹那か?どうした」
『先程の続きだ』
顔が見えなくて、まだよかった。
『…もしユニオンが介入してきて…アイツが現れたら、俺は、死んでもアイツを討つ』
きっとエクシアの中ではあの澄んだ眼差しで刹那はコックピットの先を見つめているのだろう。

刹那は、覚悟していたのだ。
もしこの任務が終われば、自分が降ろされるかもしれないことを。
そうでなくとも精神的に打ち勝つ為に、元凶を討つつもりなのだろう。
…追い詰められた彼女の、あまりにも哀しい選択だった。
自らの意思を守るため、誇りを守るために。


違う、刹那。
確かに俺は、俺達はお前を根本的に助けられない。
だけど、

「なにいってんだよ刹那」

計器を弄りながら、極力軽さを装い、ロックオンは一人で立ち向かおうとしている彼女に語りかけた。

「死んでも、なんて言うな。お前とエクシアなら余裕でぶっ飛ばせるだろう?それに、俺もついてるからな。狙い撃ってやんぜ、そいつ」

愛用のスコープを引き出し、最終点検する。



「…狙い撃つぜ」



今はまだコックピットしか映らないスコープ。だがもしこの視界に刹那の敵が現れたら、迷いなく引き金を引こう。
彼女の悪夢の元凶を滅ぼすことをサポートするくらいしか、ロックオンには出来ないのだから。





『出撃準備完了。タイミングをエクシアに譲渡』
『了解』




エクシアが滑走路にゆっくり運ばれていくのがモニターに映し出される。
その先に広がるのは、暗闇。

『ロックオン』

機体の稼働音や様々な飛び交う指令に掻き消されながらも、刹那の小さな声が聞こえた。

『有り難う』

かつてないくらいの穏やかな声。だが真意を問う前に、デュナメスもまた出撃準備が完了したことをフェルトに告げられる。


「じゃあ一発派手にやってやろうぜ、刹那!」
『了解。刹那・F・セイエイ、出る』


太陽炉が煌き、エクシアが闇を切り裂くように飛び出していった。刹那の意志の強さが現れているかのように、まっすぐ。
緑の粒子の軌跡が刹那が飛び出した宙域から消えたのを確認し、ロックオンもまた出撃体制に入った。



「ロックオン・ストラトス、出撃する!」

もう刹那が傷つかないように。
刹那の背中を守り、脅威を取り除こう。





それこそが、戦いしか選べない少女を、争いや悪意から守れなかった自分に出来る唯一のことなのだから。
もっとももう少し彼女の内側に踏めこめれば、紛争根絶や己の復讐心が泣ければ、もしかしたら救えたのかもしれない。



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管理人:流離

since:20071112


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