アクアリウム

初めてのOO小説はグラ→刹です。
かなり重症なハム様。もうキモイ位片想いなのが丁度いいと。というかハム様の部屋にアクアリウムあったらかっこいいなというだけの妄想です、すみません。 

続きからどうぞ。

ア ク ア リ ウ ム 




暗証番号を指先で軽く叩くと、重い鉄の扉が一瞬で開く。
グラハムは自宅に入ると、灯りもつけずまっすぐソファに倒れ伏した。
制服を着たままだが気にしない。体が一刻も早く休養を求めているのだ。

戦闘中は夢中になってきづかなかったが、カスタムフラッグがかけるGはフラッグの数倍でかなり体に負担をかけている。
ギリギリの精神状態での戦いは行為に似た高揚感を得られるが、軋む体とあいって事後のような虚脱症状に襲われた。
熟知しているとはいったものの、ここまでとは思っていなかった。 

私も歳をとったかな。

そう苦笑しながら苦しいだけのネクタイを解いて無造作に投げ、ぼんやりと薄緑の光を放つアクアリウムを何気無く見つめる。
あまりの殺風景さを訪れたカタギリに笑われ、ちょっと悔しくて洒落たものをと買ってみたのだが、いかんせん職業上いつ帰れるかわからないことと、興味がないことには無関心なたちな為、既に憐れな魚は天に召されて一匹たりともいない。ただ海をもした水槽は心を落ち着かせてくれる為、いまだに撤去せずに置いてある。 


ガンダム・・・
規則正しく出る泡が証明に照らされ淡く光る。あの光の粒子のように。


ガンダムに一撃を与えられた。パイロットとしての喜びも束の間、そのままガンダムは海の中に消えていってしまった。
ようやく手に届く所に来たと思った矢先、これだ。
部下に呼ばれるまで玩具を奪われた子供のように、平穏さを取り戻しつつある波面を見つめていた。また現れてくれないかと、彼が消えた後に残った白い泡を見つめていたのだ。


CBはたった四機で世界と戦うという常軌を逸脱した存在だ。
世界を三分しているユニオン―さらにその中の一兵士でしかないグラハム・エーカー―に構っている暇はあるはずがないことはわかっている。

だが。

「これで彼も覚えてくれたかな？」

そう、今はまだそれだけでいい。
私という存在を知ってくれるだけでいい。
性能差はカタギリ達が少しずつ埋めていってくれるだろう。だから、焦ることはない。


「今回は一節くらいしかできなかったが、次は一曲まるごと踊ってもらおう、若きパイロット君。」

主なき水槽を見つめ、まだ見ぬパイロットに思いをはせる。


どんな姿をしているのか
どんな声をしているのか
どんな性格をしているのか


久しく自分よりも強いものがおらず満たされれなかった自分にとって、蒼天から舞い降りた天使に何よりも魅せられた。
そしてその興味は機体を越えて、中にいるパイロットに向かう。
AEUにも人革連にも、ましてやユニオンの仲間であっても奪わせない。
天使の羽をもぎとり中にいるパイロットを初めて見るのは、私だ。


「ああ、だから早く」

君に会いたい。例え体が砕けようと、フラッグが鉄屑並に壊れたとしても、君に会いたい。

こんな私を君はどう思っているのだろうか。
否、コックピットの奥にいる君はこんな狂おしい程の私の思いを知らないだろうね。

だから、君を暗い機械の奥から引きずり出して、この思いを伝えたい。
海の底にいるだろう、君。


「待っていろ・・・ガンダム」
今は、消えた君を疑似的な海を見ながら見もしない君に焦がれていよう。
アクアリウムの中にいもしない魚を見つめながら、グラハムは一人、口を歪めた。