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OO中心戯れ言ばっか。ハム至上主義で刹受け中心カオスブログ。



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17話派生のグラ刹。過去最高の長さを誇ります。
刹那インユニオンネタで大体の設定はR18企画と同じです。
今回はハムが弱いです。むしろ刹グラに見えます。(え)
ハムは今まで剥き出しの負の感情を見せたことがなかったので、17話を見てちょっと嬉しくなりました。(変態)
弱る攻めって好きです。せっちゃんは死生観に関しては誰よりもしっかりしていると思います。
弱ハム警報発令の為、上記を読んでこんなのハムじゃないと思った方は気を付けて下さい。









誰も、口をひらかなかった。

戦闘が終われば次々とモニターに仲間達の笑顔が写るというのに。その緊張感の欠片もない会話に眉を潜めることも幾度とあったが、今日に限ってはグラハムが撤収すると言っただけで、沈黙が続いている。
普段ならダリルの軽口に皆が笑い、ハワードと自分が呆れ、グラハムから一方的に夜の誘いの通信が来て回線を切って、MSWADの本部で教授やカタギリと小さいながらも宴会をする。それが日常だった。
だが、モニターごしに見えるのはえぐれた基地と壊れた建物。ユニオンのエースと最高の技術が集いし誇り高くそびえる施設は、どこにもなかった。



黙し、今はただ眠れ



パイロットスーツを脱ぎ捨てるかのように着替え、ロッカーを出る。
いつもなら待ち伏せしている上司の姿がなく、刹那は僅かながら驚いた。
堂々とセクハラされなくていいのは有難いが、心の隅ではあいつだけはいつもと変わらずいてくれたらとどこか期待を抱いている自分がいて。

どちらにしろ、今日は待機しなければいけないだろう。
仮眠でも取ろうかと考えたのだが、そんな気分にはなれなかった。
静まり返った同僚達と気まずい時間を過ごしたくもない。
そんな顔しても、失ったものは戻ってこないというのに。
気付けば、刹那はスカイラウンジへの階段を昇っていた。



自販機でコーヒーのボタンを押す。普段はカフェオレだが、今日は無糖のものが飲みたかった。非常灯しかついていない為か、紙コップに闇色の液がたまっていく。
薄く湯気立つ紙コップを手に、窓際まで向かった。しかしそこで、思っても見なかった後姿を見つけた。

「・・・上級大尉」

強化ガラスの緑がかった月明かりの下に、グラハムがいた。
窓に手をつき、背を向けている為表情は読みとれない。しかし、いつものような自信に溢れた気配はなく、刹那が近付くまでわからなかった程だ。

「刹那、か」
「・・・少尉と呼んでください。」
いつものように適当にあしらい、近くにあったソファに座る。
だがグラハムは振り向きもしなかった。
おかしい。
明らかに様子が違うが、こういう状況に慣れていない刹那はどうしていいかわからず、ただコーヒーを口にすることしかできなかった。苦い。まずい。
大体いつも話しかけてくるのはグラハムである。今更ながら、どう声をかければいいかわからなかった。
彼の淡く輝く金髪をみつめながら、どうしたものかとコーヒーをちびちびすすることしかできない。
やはりハワードが入れてくれるのが一番、と思いかけ彼がもういないことに気付き虚しくなる。


「・・・刹那」
そうしてコーヒーの中身が半分位になった時、グラハムの声が聞こえた。
「私は・・・隊長として、失格だろうか」

相変わらず背を向けているが、それは余りにもか細く、弱々しい声で。

「教授やハワード、フラッグファイターを亡くしてしまった。ああ、そうさ目の前で・・・」
グラハムが手を見つめる。手袋をし純白に光るその手を、忌々しいもののように。
背中は180の巨体には思えぬ程小さく、芯の通っているはずの背筋は、硝子に手をつかないと真っ直ぐになれないようであった。

「・・・大尉の責任じゃないと思いますが」

いつもとはかけ離れた姿に、口を開いても到底慰めにならない言葉しかでない自分を今日ばかりは呪った。
いつもグラハムは笑っていた。どちらかといえばいつも不機嫌なのは刹那で、この口は常ならば彼を罵る言葉や、事務的な冷たい言葉しか紡がない。
なのに今日は、

「だがもう少し早く来れれば、あの時ハワードを制止すれば・・・」
大人の維持なのか、仮面が剥がれ落ちる瞬間を見せたくないのか、決してこちらを振り向こうとしないグラハム。
しかし彼の鍛え上げられた肩は震えて、語尾の最後はかすれていた。
そんな弱々しい姿は、初めてみるものだった。

俺に、どうして欲しいんだ。
混乱する頭。
こんな時、相手を癒せる話術を刹那は知らない。大人に教わったのは的確に敵を殺す方法だけだ。
月並みの、うわべだけの優しい言葉か?しかしそんな言葉だけで彼は納得しないだろう。失った人は戻ってこない。そんな子供にも分かりきった事実を納得し、消化する理由にはならない。クルジスにいた時、嫌という程見せ付けられた事実だ。

グラハムとてよくわかっているのだろう。だが、いやだからか、理由という名の赦しが欲しいのか?
だがすがりつく相手を間違えている、あんたは。


「刹那・・・」
一瞬硝子に写った、彼の鏡像が見えた気がする。思わず息を飲んだ。
「刹那、私は・・・」
それは刹那がどこか待ちのぞんだ、しかしいまはもっとも見たくないものだった。

やめろ笑うなそんな無理した歪な笑顔を俺はみたいわけじゃないそんなもの見せられても俺は何も出来ないやめろ振り向くなやめろやめろ!



気付いたら紙コップを投捨てげ、刹那はソファを立っていた。
「刹那?」
「・・・振り向くな」
顔を見ないよう、彼の背中に頭を擦り付けるように抱きついた。
制服ごしから、グラハムの匂いがする。思いの他暖かいそれに、刹那は内心安堵した。

「・・・いっておくが俺は何も気が利いたことは言えない。」
前置きをし、一瞬少ない語彙から言葉を絞り出した。その間も一度もグラハムの顔をみない。
「確かにあんたのいう通りだ。しかし、戦場でそんなことは日常的だ。悔やんでも何もならない。」
「・・・ならば私は・・・」

腕の中のグラハムが震えた。だが無視して言葉を進める。顔を見たら、全部言い切ることが出来なくなるから。

「前を見て、笑え、グラハム・エーカー。どうせ事実が変わらないのならば、あんたは他の隊員を率いる為にも、いつも通りでいろ。いつものあんたがいないと、皆もどうしていいかわからない。」

戦場において犠牲はつきものだ。戦う限りは。綺麗ごとを述べた所でその絶対原則は変わらない。ならば。
「いつもみたいにガンダムだけ見ていろ。変な台詞を吐いて、俺を呆れさせろ。妙に自信があって、いつも笑っている。俺達が見たいのはそんなあんただ。」
言い切り、彼の背中にしがみつくかのように頭をこすりつける。
わかっている。これが、彼の求めていた答えじゃないことぐらい。彼を傷つける言葉かもしれないくらい。
だが考えてもいい言葉は思いつかないから、率直に心情を吐露することしか出来なかった。



自分の用は済んだ。後はお前が話せ。
しばらく刹那はグラハムの背中に顔を埋めていたままでいたが、急に不自然な力が働いた。
視界が青から、天井、そして緑の光を移す金へ。
後頭部に柔らかい何かが当たる。
気付けば、刹那はソファに押し倒されていた。

表情を見る間もなく、顔を首筋に埋められる。細やかな髪があたり、擽ったい。

「グラハ、ム」
「刹那、」
甘い声は、今日は低くかすれていて、一瞬どきりとした。

「ありがとう。」
でも、とくぐもった声が耳の下から聞こえた。

「今だけは、君にすがっていいかな」
そう言って、グラハムが顔を起こした。
いつもより疲労が濃く残る、酷い顔。そういえばガンダム滷獲の時からたいしてこいつは寝てないことに気付いた。
しかし翠玉の瞳を細めた、刹那が欲しかった笑顔がそこにあった。
「・・・ああ」
それだけ言って、刹那はグラハムの背に手を伸ばし、引き寄せる。
そして、「とりあえず寝ろ」と言って自分も目を閉じた。
明日にも、彼等が欠けた日常は続く。
グラハムは笑い、自分達は相変わらずガンダムを追い掛けるだろう。
だけど今だけは、
今だけは。
眠りの中に、彼等を見てもいいと思う。
そして自分で気が済む答えを見付ければいい。
それが生者の唯一出来ることで、勝手すぎると非難されても赦しになるのならば。
その為に頼られたならば、少しだけ嬉しかった。





光が差し込む。照明が消えたラウンジに。
「おはよう」
ぱちりと目を開ければ、傍らで既に起きたグラハムがいた。しかしどういうわけか寝癖一つなく、それがむしょうに腹立たしい。
「眠れたか」
「お陰さまでね。」
微笑むグラハムを見て、仮面をもうつけ直したのかと安堵する反面、どこかチクリと胸が痛む。
今日からまた、ガンダムを追う毎日が始まる。グラハムはまたガンダムだけを見つめるのだろう。
自分で言っておきながら、少しだけ空虚感を感じた。
「しかし惜しいことをした。君の寝顔を存分に楽し」
「さっさと寝惚けた頭を冷やして下さい上級大尉」
前言撤回。やっぱりもう少し落ち込んでろ。
皺になった制服を伸ばしながら仕事モードで睨みつけると、「照れなくてもいいのだよ」ととろけるばかりの笑みを浮かべた。朝の光とあいまってなにかのCMかのように眩しいそれに物凄く腹が立ち、床に落ちていた紙コップをグラハムの方に蹴飛ばした。
白い床に黒い液が点々と垂れたが、それを踏みつけ刹那は上司を置いて歩き出した。






黙し、ただ今は眠れ
(それが勝手なことと知っているけど。そうせずにはいられないんだ)
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FIRST
「非晶質。」にようこそ。
ここはグラハム・エーカー至上主義グラ刹になりそうな予感のする二次創作腐女子ブログです。
初めての方は「ハジメニ」を読んでください。わからずに突き進むと大変なことになります。
にょただらけなので苦手な方はご遠慮ください。
感想、誤字脱字、その他管理人に突っ込みたい方は最下部のメルフォからか、↓の☆を@に変えてお願いします。
ham_otomeza_12g☆yahoo.co.jp

管理人:流離

since:20071112


更新停止中。twitterで色々妄想してます。

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